2020年8月18日火曜日

お人形用ショーケースを作った。


去年お人形さんお迎えしたんですけど、うち部屋小さいし、ぐちゃぐちゃだし、せっかく品のあるお人形さんなのに、これじゃあんまりだ、不憫だ思ってショーケースほしいなって考えていたんですよね。

買うのもなんか素っ気ないし、一度自分の考えたショーケースみたいの作ってみたかったので作ってみました。視覚的な美しさだけでなく、中にはいるお人形のためのことも考えられたショーケースが完成しました。


サイズですが、SD16でも立った状態でも窮屈にならない高さ70cm(この娘はSD13です)、二人くらいならぎり入れる横幅50cm、座っても窮屈にならない奥行き30cmと今後一人くらい増えても対応できるサイズになっています。今の所増やす予定はありません。
左側面が扉になっていてそこからアクセスできます。

ガラスは日本板硝子の3mm厚高透過ガラス(オプティホワイト)を使用し、ガラス特有の青みがかりを軽減し、透過率を向上させています。ただしコスト削減のため、背面と天面は普通の透明ガラスを使用しています。
透明ガラス(左)と高透過ガラス(右)
これは5mm厚のカットサンプル
DIYだとついガラスの代わりにアクリルを使う方法もあるのですが、ガラスを使うと本当にそれっぽくなってとても綺麗です。傷に強く、加工中の取り扱いはガラスのほうが楽ですした。
ガラス想像してたよりめちゃくちゃ重いです。おかげでずっしりしてるんで安定感はあります。

更に紫外線による劣化を防ぐためと、ガラスの反射低減を目的とし、3M Scotchtint 反射低減フィルム LR2CLARXを両面に貼り付けております。
このフィルムを貼り付けることで、ガラスの反射光8%を2%まで軽減し、写り込みを防ぎ、ガラス越しでも大変綺麗に見えるようになります。
左が反射低減フィルム貼付け後、右が貼り付け前
実は反射率0.08%と極めて低い日本電気硝子の見えないガラス®なんてのもありますが、価格がすごいんです。反射低減フィルムを使用すればそこまでの性能はありませんが、安価に写り込みを低減することが出来ます。
他にもフィルムを貼り付けることでガラスが破損しても飛び散らないなどの効果もあり、中のお人形などを守ります。

アクリル板の紫外線による蛍光作用
フィルムを貼ったガラスは紫外線をカットし、アクリル板が影のようになっているのがわかる。

自作分光測色計で、可視光域における各波長の透過率を測定してみました。

光源はハロゲンと紫外線LEDを使用して、素通しの状態からの受光量の比を計算しています。

光による損傷や変褪色による影響は紫外線領域のみを検討すればいいわけではありません。米国商務省標準局の損傷や変褪色の実験によると、紫外線領域から可視光領域にかけても変褪色や損傷の影響が生じることがわかっています。
今回の測定では、フィルムを貼り付けた後、影響の生じる可視光領域についても遮蔽されていることが確認できました。
また、全体で透過率が向上していることが確認できます。

実際反射低減フィルムを貼り付けるととても本当に反射が少ない。
ここまでちゃんとやってるショーケース、市販品でもなかなかないんじゃないんですかね。

ガラス越しでも綺麗に写真が撮れる

ただフィルムなので傷が付きやすい、屈折の関係のため両面に貼り付けしないといけない。
若干貼り付け失敗して、ごみ入ったところが浮いてるとかあるんですけど、それほど気にならないレベルです。フィルム自体の取り扱いはさすが3Mのいいやつだけあって素直に張り付いてくれるんですけどね。
注文すると1450mmロール幅で届くので、狭い部屋だと切り出しが大変だし、入手性も正直悪い。値段も結構高いんで、次は無いでしょうね。
「真剣にやれよ。仕事じゃないんだぞ」ってことでは、高透過ガラスと反射低減フィルムの組み合わせはかなりありだと思います。

フレームは加工のしやすいヒノキ材を使用しました。若干のアンティークっぽさも出してるつもりです。
塗料には無臭柿渋を使用してみました。以前スピーカースタンドを作ったときにオイルステインを使用したのですが、乾燥直後の臭いがきつい、湿気がある状態で紙を載せてると色移りするなどの問題が生じました。
柿渋は強くこすったり、荷重をかけない限り色移りがしにくいことがわかっています。防腐、防虫効果がある他、経年による色の変化を楽しめます。
柿渋を3回塗りしたあと蜜蝋で程よいツヤ感を出しています。

色々な木目を並べてみましたが、柿渋は意外と親和性があります。

ガラスの固定は底面溝掘りではめ込み、他の三方枠はガラス押さえで固定し、各骨組みはボルト締めすることで、分解やガラス交換を可能にしています。可能といっても面倒なんで組み上げ後は試していませんが。

どうしてもビスが目立つのですが、物は言いようでこれはこれであじがあります。

ここまで来るのまたいろいろ時間がかかって大変でした。
木工ムズカシイ…。
フレームが完成したら、あとは実寸でガラスを注文してその後は早いんですけどね。フレームの構造は手探りで始めたので、この形になるまで時間がかかりました。
家に素人木工品といえども、ちゃんとしたガラスをはめたショーケースがおいてあるのはなんとも高級感があり、つい美術館スタイル(腰に手をおいて、もう片手で顎を揉む仕草)でお人形を眺めるのはなんとも贅沢です。みなさんも試しに俺・私のショーケース作ってみてはいかがでしょうか。




※参考文献・引用文献

藤原工(2014)『学芸員のための展示照明ハンドブック』株式会社講談社.


山本和史(2012)「柿渋による木材の着色仕上げに関する研究」,岡山大学大学院教育学研究科研究集録 第150号,p71-78.


日本板硝子株式会社「オプティホワイト(高透過ガラス)」
<https://glass-wonderland.jp/product/1309/>

日本電気硝子株式会社「見えない硝子®」
<https://www.neg.co.jp/rd/topics/product-invisible-glass/>

中嶋硝子工業株式会社「ガラスは紫外線を防ぐ」
<https://www.ngci.co.jp/tech/tech_kn21.html>

3M™ Scotchtint™ 反射低減フィルム LR2CLARX 
<https://multimedia.3m.com/mws/media/1408986O/3m-scotchtint-windowfilm.pdf>