2017年12月25日月曜日

一肇「少女キネマ」は 悩める男子全員に読んでほしい青春物語だ!

今回は、角川文庫から出ている一肇(にのまえ はじめ)氏が著す、「少女キネマ」という本を紹介します。書評じゃないです。


自分は本の紹介が苦手だ。文章が進まず、ここまで書くのにせいぜい30分くらいかかった。
それでも物語の没入感や、文章の波に流される感覚がとても心地よかったので、奮起して書くことにした。それくらいの想いがあるので、僕がどれくらい強くおすすめしているのか少しお察ししてほしい。


前回、「大学生活のモラトリアムに未練を残す男子全員に捧げる一冊。」とざっくり紹介した。我ながら語感が小気味良く、今後も随所で使いたいフレーズなのでここでも使うが、モラトリアムとは白地図の上を彷徨って、恋煩い、振り返ったり、戻ったり、後悔したりしするが、だけれども立ち止まっていられず、ひたすら動き回り、自分は何がしたいのかとか、大人になってどう振る舞うべきなのかとか考える時間なのではないか。こんなこと辞書には書いてないが、自分はそう思っている。

20歳過ぎたら、全員大人になると思ったら大間違いである。いたずらに社会に出る過渡期を引き伸ばし、気づいたら子供のまま大人になっていたりする。
学生諸君は今の時間を思い切り悩んで過ごしてほしい。

……、なんて偉そうに言っているが、自分も子供のままなことに気づいてないかもしれないので、あまり鵜呑みにしないように。

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で、主人公は前述のように、大学生活で暴走している主人公そのものであり、対するヒロインの黒坂さちちゃんは、僕ら男たちが理想とする日本に存在していたといわれる、存在していたといわれるお淑やかな大和撫子が描かれている。本に描かれているさちちゃんという存在を、妄想力を総動員して想像するだけで心があたたまるので、それだけで読むに値する本であり、もうここまで書けば充分な気がする。


黒坂さちちゃんの魅力は、自分の筆力では表現しきれない。本を15ページ程度読むだけで、さちちゃんの虜になり、読み終わった後はそのまま本の中のさちちゃんに数日間は魂を抜かれることになる。さちちゃんの魅力の前に読者は無力である。

また、主人公を取り巻く個性的すぎる男友達だちが、物語をあらぬ方向に高速回転させてくれて物語をより一層おもしろくしてくれる。さちちゃんを大和撫子といったが、男たちも負けずと日本男子らしいクセの多いやつらばっか揃っている。こういう四字熟語を多用すると、すぐ右翼だと言われるのが世知辛い世の中だが、世にはそういういい方向にバカで一途ですぐ暴走するやつらがもっと居ても良いのではないだろうか。
友人とは両親よりもたくさんの本音と愚痴と弱音を言える相手だ。学友は社会に出ても長い付き合いになる。学生諸君は良い友だちと出会ってほしい。そんな気持ちにさせてくれる登場人物が出て来る。

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物語は終盤にかけて急加速する。それはもう笑うしかない勢いで文章が走り出す。この文字の勢いはぜひ読んで体感してもらいたい。
そのままの勢いで物語はフィナーレを控え、主人公と祝杯を上げようかと思っていたところに、いきなり床が抜けたかのような脱力感と言ったらない。著者に臓物を握られた気分であった。

帯の宣伝はすこし誇張が入っているのかとおもったが、あながち間違いではない。
自分は読み終わった数時間、鳩が戦車砲を食ったような表情をしながら本を読み返していた。そのまま湧き出る感情を押さえきれず、とりあえず一日中車で走りまくった。

筆者が「このラストシーンを書けたらもう死んでも悔いはない」なんて書いてあったが、物語を畳み掛けるように幕引くスピード感はとても痛快爽快だった。本人がそこまでいい切るには、相当の心意気と自信があったにちがいない。ちゃんと伝わってますよ。


たまたま書店で見つけた本がこれだったのも思い出深い。この本を置いていたジュ◯ク堂書店の店員には、感謝の念に耐えない。


さて、ここまで一切本のあらすじを話さず本の紹介をしてしまった。自分は物書きじゃないから、伝えたいことがちゃんと文章になっているかわからない。だけど自分は、本も映画もアニメもまっさら状態で見たいので、なるべくシナリオに関わる話はしたくなかった。

まずは年末年始を惰眠でむさぼる前に「少女キネマ」を読んで、寝ても立ってもいられない年末年始を過ごして頂きたい。

もともとは単行本ででてたんですが、読みやすい文庫本が出てますよ。

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